この度、大黒天尊を新たに造立し、不動堂に安置奉(たてまつ)らんと発願いたしました。5年前より五寸程の小さな三面大黒天を毎朝、拝んでおり、お祀(まつ)りすべき時が来たならば新たに大きく造立する旨(むね)を天尊に伝えておりました。
大黒天は梵名(ぼんめい)を「摩訶迦羅 マハーカーラ」といいマハー(摩訶)は「大」、カーラ(迦羅)は「時、黒(暗黒)」を意味し、本来はヒンズー教のシヴァ神の化身、或いはビシュヌ(生育の神)の化身ともされる。
そのマハーカーラがそのまま密教にとり入られ、青黒い体に忿怒相(ふんぬそう)をした護法善神となったのである。日本には密教の伝来と共に伝わり、軍神、戦闘神、富貴(財)の神とされたが、特に中国において、この3つの性格の中、財福を強調して祀られたものが日本に伝えられたとされている。(薄双紙には「この尊、戦斗神、財福神、冥府神の三性格あり」と書かれている。)
密教と共に伝来したことより初めは真言、天台で信仰されたが、特に天台の伝教大師(最澄)が毘沙門天、弁財天と合体した「三面大黒天」を比叡山に祀った。
更に大国主神(おおくにぬしのみこと)と習合し「大黒さん」と親しまれるようになり、日蓮宗においても鬼子母神と共に盛んに信仰され、又、七福神の一人としても人気がある。
以上が大黒天についての簡単な説明です。本来、三面六臂(さんめんろっぴ)の怒れる夜叉人(やしゃじん)であり、七母女天(しちぼにょてん)を眷属(けんぞく)とする冥界(めいかい)の神とされるが、手元にある「大黒天神法」によると、その尊容は「一面二臂(ひ)、青黒か黒色で忿怒相にして、烏帽子(えぼし)、袴(はかま)姿で右手は拳(けん)にして腰に当て左手で大きな袋を背負う姿」で表わされる。(二臂求福、六臂闘身とあり、財福を司る神(二臂)と破壊戦闘神(六臂)がある。財福神としての性質は摩訶迦羅が生育の神であるヴイシュヌの化身とされることからきており、破壊戦闘神あるいは冥府神の性質は「摩訶迦羅=大暗黒」という字義に由来しているものとされる。)よって密教的な立場としては、この次第に書かれている姿で修法するのが適切であると思ったのだが。
現在、各地のお寺にお祀りされている大黒天のお姿は室町時代以降の大国主神と習合したものが殆(ほとん)どであり「右手で木槌(きづち)を持ち左手に袋を背負い米俵(こめだわら)の上にのっている」ものである。
修法の対象である大黒天神の尊容は如何(いか)にあるべきか。
いろいろ悩んだ挙(あ)げ句、写真のとおりのお姿となりました。米俵は付けない代わりに「天部の仏」としての象徴として「荷葉座(かしようざ)※」の上にお乗りいただくこととしました。
又、そのお顔は一見、温容に見えて不敵(ふてき)な(少し不気味)笑いを浮かべる昔の軍神としての性格が垣間(かいま)見えるような尊容を目指しました。
※荷葉座~蓮の葉を伏せた形にした天部の仏の台座
その大きさについては「佛説摩訶迦羅大黒天神自在円満菩薩陀羅尼経」に「我が体を五尺若しくは三尺若しくは五寸に形像を刻して伽藍に安置し」とあるが、これは仲々の大きさとなるので、お祀りし易(やす)い大きさ、「全高一尺七寸」としました。
私の寺では祈願は毎月1~5日、16日は聖天浴油供、毎月28日は不動護摩供を修していますが、新たに毎月20日にこの大黒天神供を修法していきたいと思っています。
大黒天は冒頭、申しあげたように本来、大自在天(ヒンズー教のシヴァ神の異称 マケイシュラ 梵マヘーシュヴァラ 音写は摩醯首羅 仏教に入り仏法守護神となる)の変化身で忿怒身(ふんぬしん)であるので努努(ゆめゆめ)、軽い気持ちで扱ってはいけない。貴人に対するのと同じように接しないといけないのは聖天尊も含めて他の天部諸尊も皆、同じである。
求福を第1とし参拝される方々の財福満足、家内円満、商売繫盛、業務円満等を祈願して参りたいと思っています。
オン マカギャラヤ ソワカ
合掌
2025年02月01日