5月23日~24日、京都、奈良の古寺巡りをしてきました。
第1日目は先ず京都。高雄山神護寺、栂尾山高山寺と共に三尾の名刹として知られる槇尾山西明寺に参拝しました。
弘法大師の高弟智泉大徳が神護寺の別院として創建したのに始まり、その後、荒廃したが後宇多法皇より平等心王院の号を命名賜り神護寺より独立した。現在の本堂は桂昌院の寄進に依るものです。
清滝川のせせらぎを聞きながら新緑に包まれた石段を登り山門を入ると正面に本堂、右側には聖天堂があります。先ず本堂参拝の後、聖天堂へ。 聖天堂は大きく開扉されており内陣まで進み法楽を捧げました。
観光客も少なく落ち着いた雰囲気の中、初夏の好天にも恵まれ新緑目映い西明寺を堪能し次の大覚寺へと車を走らせました。
大覚寺は正式には「旧嵯峨御所大覚寺門跡」と称し平安初期、嵯峨天皇がご成婚の折、離宮を建立されたのが前身です。
弘法大師のすすめにより嵯峨天皇が浄書された般若心経が奉安され般若心経写経の根本道場として知られています。明治初期までは代々天皇又は皇統の方が門跡(住職)を務めた格式高い寺院であり、又、いけばな発祥の寺でもあり「いけばな嵯峨御流」の家元でもあります。
当日は大覚寺総務部長草津栄晋僧正にご案内を頂き諸堂参拝をさせて頂きました。ご多忙の所、誠にありがとうございました。
大覚寺参拝を終えた後、塔頭であり聖天尊祈願寺である覚勝院に参りました。立派な天堂(本堂)の前で法楽を捧げ記念写真を撮り宿泊所のホテルへ向かいました。
2日目は京都駅より近鉄に乗り奈良長谷寺へ。
事前に購入した切符で特急に乗り大和八木駅で下車。予約しておいたレンタカーに乗り換え一路、長谷寺を目指す。
長谷寺は真言宗豊山派の総本山であり、我々に聖天浴油法を伝授して頂いた名古屋大御堂寺山主水野真圓僧正の所属する宗派です。水野師よりの依頼を受けられた長谷寺教務執事伊東聖隆僧正のお手を煩わせ山内を全てご案内頂きました。特に水野師のご子弟が丁度、本山に研修生として修行中であり案内役を務めて頂きました。これも法縁かと嬉しい思いでした。
牡丹がまだ僅か残り咲いている中、399段の石段を登り本堂へ。 大悲閣と大書された懸造りの大本堂の中には10mを超すご本尊十一面観世音菩薩が鎮座されておりますが足元は見えません。本堂右側より階段を降り地下堂とも言うべき所に参るとご本尊さまのみ足の部分が。その両足は参拝者に触られ金箔がとれ、黒光りしております。我々も法楽を捧げみ足に手を重ねました。
その後、普段は開扉されない護摩堂へ。この護摩堂は潅頂の時だけ使われ普段は入ることはできないとのことです。特別の許可を頂き、中へ入ると須弥壇には五大明王がお祀りされておりました。玉眼の入った五大明王は大変素晴らしく思わず息を呑む思いでした。
そして、中央護摩壇の右隣に朱色の聖天壇があり、その上には円厨子。伊藤執事の許可を頂き、水野僧正が厨子を開けると、そこには何と7体の聖天尊がいらっしゃいました。その1体1体の天覆をとり包まれている奉書をとると浴油でまっ黒に光っている尊天が現れました。思わず低頭合掌。そこで我ら4名、法楽を捧げ水野師の言葉によって御神酒を用意、献酒致しました。
恐らく、人生で復たとない機会に恵まれた一時でありました。仏縁、法縁でありました。時間が過ぎるのも忘れ下山すると昼時を過ぎていましたが、我々はそのまま次の室生寺を目指しました。
室生寺は奈良時代の末期、皇太子山部親王(後の恒武天皇)のご病気平癒祈願が興福寺の高僧によって行われ卓効があったことから勅命により創建されたのが緑起であります。 以来室生寺は山林修行の道場として、又、法相、真言、天台など各宗兼学の寺として独特の仏教文化を形成、継承してきました。その他、厳しく女人を禁制してきた高野山に対し、女人の済度をもはかる真言道場として女性の参詣を許したことから「女人高野」と親しまれています。
現在は豊山派から独立し、真言宗室生寺派大本山室生寺と称します。 こちらも水野僧正の依頼により法務執事の飯田真士僧正のお出迎えを受け山内を案内頂きました。正に国宝、重文の宝庫ともいうべき諸堂、仏像を拝しながら古い文化遺産の価値もさることながら、自然と調和する三重塔を始め諸堂伽藍のたたずまいに感じ入り、又、女人高野といわれるのはこの優雅さにも由るのではないかと思いを巡しました。残念ながら石楠花が咲き競う時期は過ぎていましたが、深山の新緑をたっぷりと目の保養にさせてもらいました。
お堂の中で特に目を引いたのは、灌頂堂であり兼学の歴史の中で真言密教の法流を感じさせるものでした。又、江戸時代5代将軍綱吉公の命により将軍家の祈祷寺護持院の開山となり新義真言僧では初めて大僧正となった隆光大僧正の墓にも詣で、心より真言密宗の隆昌を祈念しました。
今回、1泊2日の参拝の旅でしたが、今までの参拝旅行の中でも一段と中味の濃い大変有意義なものでした。今や法友(と呼んでいいか分りませんが)となった水野僧正のお陰、大であります。これも聖天尊のお導きと深く仏縁に感謝申し上げます。
合掌
2017年05月28日